堅気屋倶楽部
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第二次性徴か、幼形化か [ 馬牛 ] 07/10/14 17:37
 「じゃりン子チエの秘密」では、物語が進むに連れヒラメちゃんが可愛くなっていく、との見方を紹介し、第二次性徴によるものではないかとの見解を示している。

S.J.グールド「パンダの親指」上巻(早川書房 1986年)第9章は「ミッキーマウスに生物学的敬意を」と題して、1928年に登場して以来約50年間(第9章の素地となった文章が、ナチュラルヒストリー誌上に掲載された頃までを言うのであろう)のミッキーマウスの容貌の変化について述べている。同章によると、初期のミッキーマウスは今日の彼に較べて、顔面に占める眼の比率が小さく、四肢は細く長く、全身に比してより小さな頭部を有していた。グールドは、50年の間にミッキーマウスに起こった、頭蓋が球形に近くなり(眼の大きさは幼児と成人で大差ないため、成長につれ顔面に占める眼の大きさの比率は小さくなる)、四肢は短く太く、全身に比してより大きな頭部を持つようになる等の変化について、これらは成人に比して幼児の有する形態上の特徴であり(より一般的に脊椎動物の幼体がその成体との比較で持つ、と言ってよいかと思うが)、50年間(多分未来永劫)加齢せず、ある生物種の特定の年齢の個体に観察される上記の如き現象は、生物が幼年期の特徴を残したまま成体となる、進化生物学で言う「ネオテニー」(幼形成熟)という現象であると主張している。またコンラート・ローレンツの説を紹介し、形態上の幼児的特徴を有するものは、それと接するものに好意的感情を呼び起こし、このような反応は幼児的特徴を有するもの(特に幼児そのもの)にとって進化的に適応である、と述べている。

 ヒラメちゃんについてはどうであろうか。私はグールドのようにダイアルノギスを持ち出すほどの熱意がないのでおおよその印象を述べるにとどめるが、相撲大会に出場した頃(第3部)と「しゃくまんえん」の美貌を誇る頃(第36部)とを較べると、顔に占める眼の比率が大きくなったように思われる。全身との比で太く短い手足、相対的に大きな頭部を持つようになる変化は、他の登場人物にも共通に観察される。

連載が始まった頃の主人公の母ヨシ江さんは、細身で顔に頬骨の線が出ている、いかにも薄幸そうな女性だったが、次第にふっくらとした中年の女性に変貌していく。

 初登場の頃のミッキーマウスは、今日のような「行儀のよいキャラクター」ではなく、邦訳では「手におえない腕白者」「サディスト的な気味がある」とまで評されている。一方、連載初期の頃の筆者はるき悦巳氏は、自身の創作した作品中の登場人物にやや辛辣な面が感じられ、たとえば第6部12話では予想外の応援に驚いて転倒する主人公の行動を、先立って同様に転倒してしまった自分へのあてつけではないかと邪推する平山ヒラメが描かれているが、物語の進行に連れ、主人公の親友として理想化されていくように感じられる。


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